知るときの謙譲語とは?場面別の正しい使い方を解説

知るときの謙譲語とは?場面別の正しい使い方を解説

仕事上の会話やメールでは、知るという意味を丁寧に表す必要があります。しかし、知るときの謙譲語は「存じる」と「存じ上げる」があり、何を知っているのかによって選び方が変わります。
相手への敬意を適切に示すには、単に難しい言葉へ置き換えるのではなく、対象と場面を整理することが大切です。
ここでは、知るときの謙譲語の基本から、すぐに使える例文、避けたい誤用までを分かりやすく解説します。

目次

知るという意味で使う謙譲語の基本

知るときの謙譲語を選ぶ第一歩は、誰について、または何について知っているのかを見分けることです。
自分を低めて相手への敬意を示す表現であることを押さえましょう。

存じるは事柄を知っているときに使う

「存じる」は、情報・事情・場所・予定などの事柄を知っていることをへりくだって伝える言葉です。
「その件は存じております」「詳細は存じません」のように用います。

知るときの謙譲語として「存じる」を使うと、相手が持つ情報や話題に対して丁寧な印象を与えられます。
ただし、知識の有無を答える場面に限らず、認識している事実を伝える場面でも使えます。

なお、「存じています」よりも、ビジネスでは「存じております」のほうが改まった表現です。
社外の相手や初対面の人には、状況に応じてこちらを選ぶと安心です。

存じ上げるは人を知っているときに使う

「存じ上げる」は、人物を知っている、面識がある、名前を聞いたことがあるという意味で使います。
「以前からお名前は存じ上げております」が代表的な使い方です。

知るときの謙譲語では、人物には存じ上げる、事柄には存じるという区別が基本になります。
相手の会社名や商品名などは人物ではないため、通常は「存じる」を使います。

「社長を存じる」のような言い方は、文法上ただちに誤りとはいえません。
ただし、人への敬意をより明確に示したい場面では「社長を存じ上げる」のほうが自然です。

知っている自分を低める表現である

謙譲語は、自分側の行為や状態を低めることで、聞き手や話題の相手を立てる表現です。
知るときの謙譲語も、自分が情報を把握しているという状態を控えめに伝えます。

そのため、相手の行為に対して「部長は存じておりますか」と使うのは適切ではありません。
相手を主語にする場合は、「ご存じですか」のような尊敬語を選びます。

誰が知っているのかを先に考えると、敬語の方向を誤りにくくなります。
自分や自社側なら謙譲語、相手や目上の人なら尊敬語を検討するのが基本です。

存じると存じ上げるの使い分け

意味が似ている二つの表現も、対象を取り違えると不自然に聞こえます。
知るときの謙譲語を実務で使う際は、対象別に確認しておくと迷いません。

対象ごとの選び方を確認する

使い分けは、知っている対象が人か、人以外の事柄かで判断できます。
相手の名前や経歴は人物に関する内容でも、文の中心が何かによって表現を選びます。

知っている対象 基本の表現 例文
人・担当者・著名人 存じ上げる ご担当者様のお名前は存じ上げております。
事情・内容・場所・商品 存じる その経緯については存じません。
相手が知っているか ご存じ すでにご存じでしょうか。

この整理は、知るときの謙譲語をメールで使うときにも役立ちます。
迷った場合は、文中の「知る」を「把握している」「面識がある」に置き換えて考えると判断しやすくなります。

名前を知っている場合の言い方

名前だけを聞いたことがある場合は、「お名前は存じ上げております」が自然です。
これは名前の情報ではなく、その名前を持つ人物を認識しているという意味合いになるためです。

一方で、「新サービスの名称は存じております」のように、名称そのものを情報として扱う場合は「存じる」を使います。
知るときの謙譲語では、文が指している対象を丁寧に見極めましょう。

面識がないことを添えるなら、「お名前は存じ上げておりますが、直接お目にかかるのは初めてです」と続けられます。
知っている範囲を正確に伝えるため、過度に親しい印象を与えずに済みます。

知らないことを丁寧に伝える方法

知らないことを伝える際は、「存じません」や「存じ上げません」を使います。
事柄なら「詳細は存じません」、人物なら「その方は存じ上げません」と表現します。

ただし、相手からの質問に「存じません」だけで答えると、やや突き放した印象になる場合があります。
「確認のうえ改めてご連絡します」といった次の対応を添えると、丁寧で実務的です。

知るときの謙譲語は、知らない事実を曖昧にするための言葉ではありません。
分からないことは率直に認め、対応方針を明確にすることが信頼につながります。

ビジネスで役立つ知るときの謙譲語の例文

敬語は正しさだけでなく、相手が読み取りやすいことも重要です。
知るときの謙譲語を、依頼・返答・会話といった場面ごとに使い分けてみましょう。

メールで認識済みの内容を伝える

すでに内容を把握している場合は、「ご連絡いただいた件は、すでに存じております」と書けます。
より柔らかくするなら、「ご案内いただき、ありがとうございます。内容は承知しております」とする方法もあります。

「承知する」は、依頼や指示、伝達された内容を理解して引き受ける意味合いが強い表現です。
知るときの謙譲語として事実の認識を述べるなら、「存じる」のほうが意味に合う場合があります。

例えば、以前から知っていた情報に対して「承知しております」と答えると、今回受け取って理解したように聞こえることがあります。
伝えたい内容に応じて、言葉の違いを意識しましょう。

相手の人物について述べる

紹介を受けた相手に対しては、「以前からご活躍は存じ上げております」と伝えられます。
人物への敬意を示しながら、相手を知っていることを自然に表現できます。

ただし、実際には名前しか知らない場合に、親しい関係のような表現を使う必要はありません。
「お名前は存じ上げております」のように、知る範囲に合った言葉を選ぶのが誠実です。

知るときの謙譲語を使う目的は、相手を必要以上に持ち上げることではありません。
相手との関係や事実に沿って敬意を示すことで、文章に落ち着いた印象が生まれます。

電話や対面で質問に答える

電話で情報の有無を尋ねられたときは、「申し訳ありませんが、その点は存じません」と答えられます。
続けて「担当部署に確認いたします」と伝えれば、会話を円滑に進められます。

相手が知っているかを尋ねる場合には、「こちらの変更についてはご存じでしょうか」と言います。
ここで「存じておりますか」としないことが、知るときの謙譲語における重要な注意点です。

会話では、正確な敬語にこだわりすぎて返答が遅くなる必要はありません。
まず要点を伝え、必要に応じて丁寧な補足を加えると、自然で分かりやすい応対になります。

知るときの謙譲語で避けたい誤用

敬語は少しの違いで、相手を不必要にへりくだらせたり、自分側を不自然に高めたりすることがあります。
よくある誤りを知れば、知るときの謙譲語を安心して使えます。

相手に対して存じるを使わない

「部長はこの件を存じていますか」は、自分を低める謙譲語を相手に使っているため不適切です。
正しくは、「部長はこの件をご存じですか」と尋ねます。

「ご存じ」は「知っている」の尊敬語であり、相手や目上の人の状態を表すときに用います。
主語の立場を確認する習慣をつけると、この種の誤用を防げます。

知るときの謙譲語と尊敬語は、単なる丁寧さの度合いではなく、敬意を向ける方向が異なります。
自分側は存じる、相手側はご存じと覚えると実践しやすいでしょう。

存じ上げるを事柄には使わない

「詳細は存じ上げません」はよく見かけますが、詳細は人物ではないため、基本的には「詳細は存じません」が適切です。
「存じ上げる」の「上げる」に丁寧な印象があっても、対象の区別は必要です。

同様に、「会社の所在地を存じ上げております」より、「会社の所在地を存じております」のほうが自然です。
事柄を対象にする場合は、簡潔な「存じる」を選びましょう。

例外的な言い回しを探すより、基本に沿うことが実務では有効です。
読み手が迷わず理解できる表現を選ぶことが、丁寧なコミュニケーションにつながります。

二重敬語や過剰な表現にしない

「存じ上げております」は、「存じ上げる」に丁寧語の「おります」を加えた自然な表現です。
一方で、「ご存じ上げる」のように「ご」を重ねる形は誤りになります。

また、「存じさせていただきます」は通常、知ることに許可を得る意味がないため不自然です。
知るときの謙譲語は、「存じます」「存じております」と簡潔に伝えるほうが適切です。

敬意を強めようとして言葉を足しすぎると、かえって文章が読みにくくなります。
正しい敬語を一つ選び、簡明に述べることを意識しましょう。

まとめ

知るときの謙譲語は、事柄には「存じる」、人物には「存じ上げる」を使うのが基本です。
相手が知っていることを尋ねるときは「ご存じ」を選び、敬意の向きを取り違えないようにしましょう。

表現に迷ったら、対象が人か事柄か、主語が自分側か相手側かを確認してください。
その二点を押さえれば、メールでも会話でも、知るときの謙譲語を自然で正確に使えるようになります。

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